Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ライトニング空母「WASP」

 現在も捜索中のF35Aはそうではないが、ステルス戦闘機F35BはVTOL/STOL型で、短距離の滑走で離陸できたり垂直離着陸が可能である。日本にはもうじき4隻の全通甲板型の護衛艦が揃うが、これらの船にF35Bを搭載する訓練も一部で始まっている。こうなれば全通甲板型護衛艦は、軽空母に近い機能・性能を持つことになる。このタイプの船は、第二次世界大戦後にできた呼称で「揚陸強襲艦」という。

 上陸用舟艇やヘリコプターを積んで、島嶼や海岸に地上戦力を揚陸し敵の施設の破壊や、上陸拠点の確保を行うのが本来の使い方。これに最新鋭ステルス戦闘機を搭載すれば、米軍の正規空母には敵わないにしてもかなりの機動戦力といえる。近代的な島嶼・海岸上陸戦といえば、第一次世界大戦ガリポリ上陸作戦が最初かもしれない。トルコのガリポリに上陸しようとした英国海軍部隊は、拙劣な指揮や情勢判断によって一旦は上陸したものの追い落とされ、多数の犠牲者を出した。海軍大臣だったウィンストン・チャーチルの辞任にまで発展した失敗事例である。

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 鍛えられた精兵で仮に陸戦の王者だとしても、揚陸の瞬間や補給を待つ間はもろいものだ。したがってこの危険な時間をなるべく短くし、その間は十分なカバーをかけるようにしたのが着上陸戦力、米国でいうと海兵隊ということになる。第二次世界大戦中も米軍は、陸海空3軍の他に海兵隊という第四の戦力を持っていた。十分な国力を持っていた米国だからこそできた「贅沢」だが、海上移動力/戦闘力も、航空戦力も独自に持ち限定戦場では無敵にまで鍛えられた兵力だった。昨今は日本の自衛隊もこれに倣った「水陸機動団」を整備している。

https://www.businessinsider.jp/post-189093 

 すでに強襲揚陸艦にF35Bを搭載した「ライトニング空母」は試行されていて、この記事では揚陸強襲艦「WASP」に同機を積載した写真が載せられている。この記事の指摘の通り、「いずも」を始めとする4隻の全通甲板型護衛艦が、「ライトニング空母」として運用されることにおおきな障害はない。空母は20世紀後半の代表的戦略兵器で攻撃用兵器であるが、戦争のドクトリンも変化してきて「空母=攻撃用=憲法違反」の公式が成り立つとは限らない。日本の「ライトニング空母」をめぐる議論というのも、ちゃんとして欲しいなと思う。