Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

アメリカ社会の分断

 休日だというのに、紀尾井町で政策勉強会があるというので出かけてみた。会場はYahoo!本社のあるビルだが、同社が場所を提供してくれるのだと主催者に聞いたことがある。立派な社会貢献だと思う。会場は17階、南に大きく開いた窓の部屋にぎっしりと机・椅子が並んでいる。開始まで30分ほどあるせいか、まだ数人しか座っていない。

 

 しかしスマホでニュースを見ているうちに、ほぼ席が埋まった。主催者によると200名近い事前登録があったとのこと。本日のテーマは「社会の分断とメディアの役割」、ワシントンDCやニューヨークに在住・勤務していた各界の有識者がパネラーとして登壇し、最初の講演とモデレータは新聞社の人が務めた。

 

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 講演では日本のメディアがヒラリー・トランプの選挙戦の行方をなぜ読み誤ったかが紹介され、トランプ大統領を生んだ米国社会の分断や米国メディアの変貌が語られた。要するに、

 

 ・SNSなどのソーシャルメディアに頼る人が増え、既存メディアが衰退している。

 ・そのため既存メディアは、極端な主張をして読者をつなぎとめようとする。

 ・視聴者も「自分の聞きたいこと」だけを流すメディアを愛用する。

 ・フェイクニュースを受け入れた視聴者は、証拠を見せられても「転向」しない。

 

 そんな環境で行われた選挙では、歯切れよく相手をぶった切るトランプ候補に支持が集まってきたという。うまくぶった切れれば、それが嘘であっても全く問題はないわけだ。現にトランプ大統領の発言(ツイッター含む)の75%は嘘だとの統計もあるらしい。普通の政治家の虚言率(?)は25%だというから、まさにチャンピオン級。パネラーからは、講演内容を裏付ける発言のほか日本メディアについての意見も出た。

 

 ・日本ではグローバリゼーションの遅れから、トランプ現象はすぐには起きない。

 ・日本の視聴者はまだ既存メディアを信じているが、新メディアが台頭している。

 ・既存メディアの経営は苦しい。有望な新人も入ってこず、将来が不安だ。

 ・新メディア(Yahoo!が発言)も、ビジネスモデル確立には至っていない。

 

 日本メディアがデジタライゼーションの波に乗り遅れているという印象は、ぬぐえなかった。メディアが衰退すれば正常な社会維持は難しい。米国の分断は、それを示してくれた先例のようです。