Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ニーズからの大学教育改革

 年間1回だけの集中講義だけだが、10年ほど出身大学で非常勤講師を務めたことがある。業界団体の役員をしていた関係で、その団体が特別な講義を年間請け負ったときの講師もやり、別の大学で一時期「客員教授」の名刺を貰っていたこともある。だからより切実に感じるのだが、企業が求める人材と大学が提供できる人材の間にギャップがあって、それは年々広がっている。

 

 僕が知っているある経営者は、10年ほど前「何?日本人の新卒が十分採用できない?なぜ外国人をもっと採らないのだ」と人事部門長に言い放った。もちろん外国人材なら十分ニーズを満たすかと言うと、そうとは限らない。要はもっと視野を広くしろ、従来の手法にこだわるなということだろう。

https://toyokeizai.net/articles/-/276417 

 この記事によると、有名な経営者である日本電産の永守CEOは自ら理事長を務める京都先端科学大学の入学式で「社会から一番求められる大学」を目指すと表明した。これは既存の大学教育に、産業界が全く満足していないことを示していると思う。そうでなければ、私財100億円を投じて大学を買ったりなさらないだろう。他の心ある日本の経営者も同じ思いの人は多いのではなかろうか。

 この記事には大学側の反論も載っていてバランスは取れていると思うのだが、永守理事長の言葉にはより重みがある。僕が社会人になろうとしたころ、あるいはその後も企業は大学卒業/修了の人材を即戦力とは見ていなかった。技術者でも進歩の遅い技術業界では、社内徒弟制度で鍛えて15年でやっと一人前というところもあった。

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 大学は地頭のいい学生を、できれば素直な学生を提供してくれれば十分、長年かけて社風にも染めながら育てるのが企業のスタンスである。しかし技術革新や国際競争が激しくなった現状では、そんな悠長な事は言っていられまい。長年企業経営者の中でくすぶっていた日本の高等教育とそれを差配する文科省への不満が、形となったのが今回の発言だったように思う。

 大学改革が叫ばれて久しいが、どの業界でも本当の改革はニーズ側から起きる。大学改革もニーズ側である企業群が「地頭だけよければ」と思わず、真に欲しい人材像を表明し実際に採用、活用することから始まると思う。この大学がその先鞭になればいいのだが。