Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

日米欧三極開発

 インターネットが普及し始めた1990年代後半、製品開発のスピードを3倍にするという「まことしやかな」話があった。グローバル企業で、日米欧3極に拠点や提携先を持っているという前提での話。

 昔から、欧州で基本的な発想を得、アメリカで現実的な設計をし、日本で緻密に仕上げる、という三題話はあった。インターネットのおかげで、それがリアルタイムでできるようになったということである。ある朝、イタリア人のデザイナーが二日酔いの頭痛に悩まされながら出勤してくる。彼は昨夜のワイン談義の中で思いついたアイデアを設計中のプロダクトに入れ込むことにした。で、設計図を弄り回すこと8時間、アップデート・ドキュメントをインターネットで送って、彼は夕方の町に消えていく。
 
 アップデートを受け取ったのは、アメリカ西海岸にあるラボ。ややオタクっぽいエンジニアがインプリメンテーションを担当している。 彼は、イタリア人の気まぐれに「むっ」としながらも、プログラムを修正し始める。そして8時間、アップデートされたプログラムは再びインターネット上へ。彼も一息つくために、ビールの栓を開けることになる。プログラムは、日本の「真面目な」エンジニアのもとに届いている。彼は出勤するやいなや、自ら構築したテスト環境にそのプログラムを入れて見ることにした。
 

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 消費者が新しいプログラムにどう反応するのか?効率は上がるのか?好感度は上がるのか?シミュレーションが続く。イタリアが再び朝を迎えたとき、どういうテスト結果がイタリア人デザイナーに送られてきたかは見ないでおこう。罵声を浴びたか、賞賛を浴びたか、まあ五分五分だろう。

 時差を利用して「24時間戦います」を実現できるだろうという話。もちろん、インターネット以前でも専用線を張ればできたことではあるが、インターネットはそのコストを劇的に下げた。この頃から、国境を越えて「情報」が流通し、その量はどんどん増えて行くようになったのである。