Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

IT屋さんの40年(2)

 35歳までくらいは、純粋に技術で食えただろう。しかし、IT産業の変遷は激しい。過去の技術+経験で競争を勝ち抜くのは、そのころには難しくなってくる。次のステップは、カネである。開発費と回収計画、どんなプロジェクトを企画しいくら使っていくら回収できるか、エンピツをなめ始めるわけだ。
 
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 海外の先行IT企業がやって成功したプロジェクトや、製品を「後追い」する場合は、事業としてのリスクは少ない。先行他社に負けないような製品の性能・品質・コスト・納期が実現できればいい。まあこれだけも十分大変なのだが、あまり先例のないプロジェクトや新しいソリューション(お客さまの課題を解決するもの)を開発するぞ、となると開発費や売り上げ計画などおカネ周りの話は大変難しい。

 要は「やってみないとわからない」のだが、事業部門長や財務本部長がそれで納得するわけがない。確証は十分ではないけれど、皆様に納得いただけるような「仮説」を考えてシナリオを書く。「たら、れば」の部分は微妙に隠して幹部にご説明する。うまくしのいで原資を確保したものだけが、プロジェクトをスタートさせられる。

 それでも、問題は次々に降りかかってくる。池井戸潤の「下町ロケット」みたいな感じ。自分の給料とはケタの違うおカネを扱うので、胃が痛くなることもある。それでも、おカネをハンドリングできないとマネジメントの一角には加われない。
 
 僕の場合で言うと、この時期は大変苦しいのだが、面白い体験もできた。新しい製品やソリューションをお客さまのところへ持っていくことも増えて、お客さまなる人たちがどういうことを考えているのかがぼんやりわかってきたことだ。彼らは弊社の製品やまして僕の技術が欲しいわけではない。究極的には「儲けたい」のである。彼らが儲かるなら、儲けの一部を僕に払ってくれるというわけ。

 すばらしい製品を開発したと言って、お客さまに向かってとうとうと技術的なすばらしさを訴える人がいる。社内ではカネを任されるようになっているのかもしれないが、技術のステージからカネのステージへは移りきれていないなと思う。カネのステージでは、社会全体でカネが廻ることを理解することが必要なのだ。

<続く>