Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

揺れに揺れる静岡選挙区

 自民党旧安倍派5人衆の一人、塩谷立議員(衆院静岡比例区)は離党勧告の処分を拒否しているが、離党は避けられない見通しだ。静岡8区の小選挙区では立憲民主党の源馬議員に敗れているだけに、比例復活の難しい無所属での次の選挙は厳しいものになるだろう。

 

 これに加えて、選挙には強かったが評判の悪かった川勝知事が辞表を提出したことで、静岡選挙区全体が揺れ始めた。川勝知事が後任に渡辺周議員(立憲民主党)を指名したとも言われ、渡辺議員が議員辞職して知事選に立候補することにでもなれば国会議員の変更が起きる。

 

 比例区の次の候補者は、実は国民民主党榛葉賀津也議員。彼は今は参議院議員(静岡選挙区)だし、彼自身知事選への出馬も噂されている。一方、自民党では細野豪志議員(衆院静岡5区)の立候補も取りざたされるなど、来るべき知事選の余波が大きく広がっている。

 

    

 

 当初川勝知事は(ボーナスを貰ってから)6月に辞任すると言っていたが、前倒しで辞任することになり、GW明けの来月9日告示、26日投開票の日程が決まった。現時点では、

 

・大村慎一氏 総務官僚出身、元静岡県副知事

鈴木康友氏 元民主党議員、前浜松市

 

 の2人が立候補を表明している(*1)。

 

 当面する知事選では、一部地元の「中央リニア反対」との強い意向(*2)があって、その意向を汲むのが誰で、そうでないのは誰かということになる。正直、通せんぼは止めて欲しいのだが、問題はそれだけではない。今月末の3つの衆議院議員補選の結果次第では、自民党中心に政界で何かが起きる。

 

 静岡選挙区には、次の総理候補でもある上川陽子外相(衆議院静岡1区)、TV報道番組の常連片山さつき議員(参議院静岡選挙区)もいます。知事選から全国への波及も考えられ、静岡発の何かがあるかもしれません。県民の責任は重いと言えるでしょう。

 

*1:川勝知事辞職に伴う静岡県知事選挙、5月9日告示・26日投開票に決定 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

*2:一説にはスズキの社長さんが、JR東海の会長(故人)と不仲だったゆえとも言われる。もしそれが真相なら、酷い話。

 

これは「処分」ではなく「人事」

 先週、裏金問題に関する自民党内の「処分」が発表された。事前にメディアが予想したのとほぼ同じ結果だったし、弁明が許される時間が非常に短いこともあり、既定路線と思われる。中には「厳しすぎる」との意見もあるが、おおむね「甘い」との評価が下されると思う。岸田総理は「ハイ、処分しましたよ。幕引きですね」とばかり、こちらも足元が揺らいでいるバイデン大統領のところに飛んで行ってしまった。

 

【一覧表あり】安倍派幹部の塩谷、世耕両氏に離党勧告 裏金事件で自民党が39人処分:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

 

 一番詳しかったのが、日頃政府に批判的な東京新聞のこの記事。収支報告書に不記載があったとした議員の名前、選挙区、今回の処分内容まで精緻にまとめてくれている。

 

        

 

 本当にクビにした人は少なく、党員資格停止の議員も、もし衆議院の任期満了までに解散がなければ、正々堂々自民党公認で出馬できる。仮に総選挙がそれまでにあったとしても、一度だけ無所属で禊選挙を戦えばいい。一方で、役職停止などの処分を受けた人は多い。岸田総裁から見れば、それらの人たちは政務三役はもちろん、党の役職から公然と外せるわけだ。

 

 そう考えると、これは「処分」に名を借りた「人事」だったことになる。さすがは「総理になってやりたいのは人事」と言っただけのことはある。政権の支持率も、自民党の支持率も関係なく、党内に強力なガバナンスを利かせるために裏金問題を利用したのだろう。

 

 組織を束ねるものとして、目の上の瘤みたいな重鎮や組織が存在することはある。それらをどう黙らせるか、排除するかを考えるのだが、一番いいのは包摂して取り込んでしまうこと。今回岸田総裁は、包摂とは真逆の統治手法を採った。

 

 これで「大宏池会」以外の人たちの離反の可能性が高まりました。僕が希望した自民党の割れ方(*1)とは違うのですが、ひょっとすると政界再編に至るかもしれません。

 

*1:まだ「影の内閣」にも早すぎる - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

正常化・健全化への長い道のり

 先月、日銀がマイナス金利政策を改め、17年振りの利上げ(というか金利のある経済環境)に踏み切った。金利は資本主義の鼓動であり、これまでの10余年間日本経済は仮死状態にあったともいえる。ようやく金融正常化のだ一歩が記されたわけだが、当面する課題も多い。住宅ローンを抱えている人、つなぎ融資にたよる中小企業などにとっては、困った事態である。ポピュリストたちは、一斉に日銀の決定を非難するだろう。

 

 政府財政についても、困った話がある。日経紙によれば、1,000兆円を越える債務を抱える日本政府は、このまま金利が少しずつでも上がっていけば、2033年には今の国債利払いより15兆円多くの利払いをすることになるという。これは消費税にして5~6%にあたる。それだけ増税しても、元本は減らない。元本を償還しようとすれば、消費税20%という可能性も見えてくるのだ。

 

    

 

 現下の国際情勢では軍事費は削減できないから、膨れ上がる社会福祉費を削減することになるだろう。増税か、福祉の削減か?いずれにせよ国民負担(*1)によって、金融正常化・財政健全化を少しずつでも成し遂げていくしかないと思われる。

 

 マイナス金利政策は<アベノミクス>の目玉、安倍元総理亡き後も旧安倍派を中心に金融緩和とバラマキを進める声は大きかった。菅政権では財政健全化を骨太方針に盛り込んだが、菅総理は旧安倍派に睨まれて退陣したようだ。あとを受けた岸田政権下では骨太方針に1行「方針2021に基づき」と書き込んだ(*2)のが精一杯、ジャブジャブ財政政策は続いていた。

 

 「COVID-19」禍で急激に膨らんでしまった財政赤字を取り戻すには、バラマキを求める国民に抗する政治的な矜持が必要。さて岸田政権後、この展開はどうなるのでしょうか。いずれにせよ長い道のりになるのは間違いなく・・・。

 

*1:「いずれにせよ国民負担です」 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

*2:気付いた記者はいた - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

なし崩し的な「歯止め」

 次期戦闘機の第三国輸出についての、うんざりするような自公協議が一応の決着を見た。

 

1)第三国輸出は、次期戦闘機に限る

2)紛争当事国には輸出しない

3)実施にあたっては、あらたな閣議決定を行う

 

 との「歯止め」を岸田総理が表明し、これを公明党が評価する形である。こと軍備に関しては、与党でありながら「平和の党(*1)」である公明党の抵抗で、不毛な議論が多々あった。治安維持に派遣される部隊に「機関銃は1丁だけ」などと規制したのは、開いた口が塞がらない話。今回の決着も、それに似た不合理極まりない結論だった。

 

 まず1)だが、公明党は「最強の殺傷武器である戦闘機が輸出可能になったら、全部可能になる」と反対していた。今の政府が「限る」と約束したところで、本当に守られると思ったのだろうか?

 

    

 

 現実には武器輸出は(目立たない形で)始まっており、先週にはフィリピンに続いてインドにも軍艦用のアンテナを輸出することが決まっている。

 

 次に2)だが、武器を必要としていて、消耗する全てを補充従っているのは紛争当事国である。ニーズの高いところに売るのは、ビジネスの常道だ。

 

 最後に3)だが、公明党は「閣議決定には公明党も入るので、歯止めになる」と言っているが、いつまで与党のつもりなのだろうか?かりに与党だったとしても、大臣ポストなどちらつかされれば、抵抗するふりだけで結局なし崩し的に閣議決定に参加するのではないか?

 

「二重の閣議決定」は武器輸出の歯止めになるのか 岸田首相は強調したが…国会は関与できない:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

 

 結局、政府は殺傷力を持った武器の第三国輸出への道を拓いたのですが、踏んでも踏んでも付いてくる「ゲタの雪」と揶揄された公明党も、重すぎる雪ダルマになった印象はあります。支持率低迷の今は無理にしても、いずれ自公連立は難しくなるでしょうね。

 

*1:特に創価学会婦人部の意向が大きいらしい

外からだと分からないこと

 トランプ前大統領が事実上の<共和党党首>のようにふるまい、全国委員長を挿げ替えるなど「政治」を始めつつある。一杯訴追されて、賠償金も多額(選挙資金で埋めているらしい)、有罪~収監されるかもしれないのに人気を集めるのは、バイデン政権が弱いからだと言われる。

 

 確かに「ブレまくり」の様相で、最大の争点である移民問題にしても、イスラエルの非人道的な攻勢に対しても煮え切らない。その理由を米国政治に詳しい人に聞くと、2020年の大統領選挙で、左派サンダース候補と手打ちしているので(自らは中道だが)左派の意向を無視できないのだ、と教えてもらえた(*1)。

 

    

 

 これなどは外から見ていては分からないこと、勉強しなくてはねと思ったのだが、逆に外国からは日本の状況が見えていないなと思う事例もあった。それは<エコノミスト誌>の立憲民主党についての考察。

 

英誌が報道「立憲民主党の泉健太が起こす変化に世界は注目すべきだ」(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース

 

 自民党の自爆によって機会が巡ってきた立憲民主党の泉代表は、日本の政治家としては若く、同性婚合法化などの新時代に向けたビジョンも持っている(*2)。同党は3・11の震災対応で問題があったが、失敗から学んで現実的・大衆的な政策が用意できるという。ではなぜ支持が上らないかというと「メディアが、自民党しか力がない」という大学教授のコメントを載せて、この記事は説明している。

 

 国内の有権者の目からすると、立憲民主党はそもそも「希望の党事件」の時に排除された人の集まりだから、という危惧がある。なぜ排除されたかというと、左寄りで外交・安全保障の継続性が難しい議員だったからだ。今は全員がそうではない(泉代表も左派ではない)が、左派に気を使わなくてはいけないのはバイデン大統領と同じなのだ。

 

 ひょっとすると<エコノミスト誌>の記者も分かっていて、英国内では説明してもムダと思っただけかもしれません。Global化が進んでも、まだ情報GAPは一杯ありそうですね。

 

*1:バイデン対トランプ、見通しは五分五分 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

*2:要は「やりたいことは人事」の総理とは違って、政治的にやりたいことがあるということ