Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ミラーリング「KANSAI」

 都構想再度の否決や、「COVID-19」で大騒ぎはしているものの、関西は元気だ。大阪維新の会の評判も悪くない(ならなんで否決?)ようだ。カジノを含む統合型リゾートIR)誘致にも積極的だし、2025年には万博がやってくる。前回の大阪万博には中学校の修学旅行でいったな、などと思い出した。ひょっとすると人材派遣大手パソナの淡路島への本社移転は、万博やIR狙いもあるのかと疑ってしまう。

 

 今回建設コンサルタンツ協会さんの近畿支部の人から話を聞く機会があり、「緊急提言!今こそ立ち上がれ!ミラーリングKANSAI」というものを教えてもらった。コンセプトとしては、現時点で首都圏に集中しているさまざまな機能を、関西圏にもミラーリングして「いつでも必要な機能を発揮できる東西複眼構造の一極に関西地区を充てる」というもの。確か東海道新幹線の指令室は東京と大阪にあって、大阪は災害等で東京が使えなくなった時のバックアップなのだが、時々は実際に大阪指令室からオペレーションすると聞いた。

 

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 多分政治や基幹産業(金融・エネルギー・通信・交通等)の機能を首都圏並みにしたいということなのだろう。第二名神高速道路2023年に全線開通、リニア新幹線の大阪乗り入れは2037年、北陸新幹線の大阪乗り入れも2046年と交通インフラは続々大阪に集まってくる。そこで、

 

◆提言1 関西における首都代替機能整備、スーパーメガリージョン形成後の2040

◆提言2 東西複眼構造の一極としての関西インフラ整備、西日本版スーパーメガリージョン形成を目指す2050

 

 の2つを提案している。東京に何かあった時のバックアップからはもう数歩進んだ内容のように思えた。また大阪も決して自然災害に無縁ではないので、関西圏の中でも主要機能を各都市に分散するのだともいう。その機能を支えるために、自動運転・ドローン・地下の物流ライン・小型のシェアリングモビリティなどを導入するとある。

 

 さすがはコンセプトをビジュアルにするのがうまい人たちだと思った。デジタル屋のように近視眼的にものを見ないで、30年後を見据えるのは重要です。しかしそのころデジタル革命はもっと先を行っているのじゃないか?僕らデジタル屋との対話も要ると、思っていただければいいのですが。

社会インフラとしての英断・・・

 トランプ先生のアカウントを、FacebookTwitterが永久追放にした。自ら「このようなSNSなかりせば、大統領にはなれなかった」というトランプ先生、代替えの運営会社を探しているようだが、そう簡単には見つけられないだろう。それだけではなく、トランプ流の共和党の中でも過激な人たちが集う新興SNS「Parler」も、今回閉鎖に追い込まれた。閉鎖の理由は、同社にクラウド環境を提供していたAmazonクラウド事業部門(AWS)が、サービス提供を止めたから。

 

IT大手「トランプ流」決別 Amazon、新興SNS接続停止: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 「他者への暴力を助長・扇動する投稿を削除できない顧客にサービスは提供できない」というのがその理由。同時にGoogleAppleもParlerを自社のアプリ配信サービスから削除している。同社は代替えのサービスを探しているようだが、そう簡単に見つかるとは思えない。

 

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 このところ風当たりの強い「巨大IT企業」だが、期せずして堂々たる社会インフラになっていることを見せつける結果にもなった。事実上「トランプ党」と化していた共和党過激派の基幹部分が、あっという間に消えてしまったのだから。Twitterのようにアプリを提供している事業者だけでなく、そこに環境を提供している事業者も意志をもって何かを封殺できるのだ。

 

 FacebookのサッカーバーグCEOは、かねて「真実の裁定者にはならない」として投稿内容に干渉することを避けてきた。これは、多くのSNS事業関係者のコンセンサスだったと思う。インターネットはみんなの物、誰でも自由に使うことが出来る物である。サイバー空間での法体系がリアル空間よりずっと緩いことに加え、自由の国米国の思想がこれを是としてきた。

 

 今回の各社、特にインフラ提供者としてのAWSの行動は、英断だったと僕は思う。ただその行為そのものは十分に検証されるべきだし、今後同じような事態が持ち上がった時、社会インフラとなった巨大ITはどういう基準で判断し、行動すべきかの議論は必要だ。

 

 インターネット業界は、巨大ITの寡占・独占だという人が多い。しかし実際は何かが止まっても、直ぐに代替えが出てくる柔軟性の高い構造なのだ。今回はその代替えもすぐ出てこないケースだが、それは誰の意思で決まるのだろうか?日本だと「雰囲気」かもしれませんがね。

まだPCR検査を誤解している

 先週の日曜討論、今年初めてということで各党党首が登場するというのでTVを点けてみた。前日から、菅総理が生出演するので見てくださいというアナウンスがあったせいもある。総理の政治手腕については僕は評価しているのだが、国民への説明についてはまだ改善の余地があると思う。「原稿棒読み」との批判も強く、それを意識してTVニュース番組に出演されるのはいいのだが、いろいろなトラブル(ガースー発言やNHK有馬キャスター更迭の噂)に見舞われている。

 

 だから日曜討論には期待したのだが、党首個別インタビュー形式だったのは拍子抜けした。「COVID-19」騒ぎを抑え込む、医療機関や「夜の街」の悲鳴をどう救うかなどの当面する課題だけでなく、今年秋までには必ずある衆議院議員選挙という政局も含めて各党党首の討論を聞きたかった。

 

 個別インタビューだったから、菅総理の発言は想定の範囲内で特に目新しいものはなかった。むしろ興味を惹いたのは、立憲民主党枝野党首と共産党志位委員長が「PCR検査拡充」を唱えたこと。2人とも無症状・潜在感染者のあぶりだしにPCR検査を使え、現状では全然検査数が足りないとおっしゃる。

 

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コロナ「国民一斉検査」論がナンセンスな理由 「なぜできないのか」と言う前に: J-CAST ニュース【全文表示】 (j-cast.com)

 

 国民全員にPCR検査をして、陰性の人だけで経済を回し、陽性の人は隔離するという主張は、この記事にある立憲民主党小沢議員の発言に代表されるだろう。この記事にあるように、専門家は国民全員への検査は1,000日かかると非現実的だという。かりに能力を100倍にしても10日かかり、その間に検査待ちの人から感染が広がる。

 

 加えて今の検査は、1~2割の誤判定(偽陽性偽陰性)が避けられないので、不特定多数から陽性者をあぶりだすのは現実的ではない。濃厚接触者の集団に対して陽性かどうかのチェックをするというのが通常の使い方で、それなら現状の12万件/日の検査能力でまるきり不足というわけではない。そのあたりは下記の記事で専門家の書を引用しておいた。

 

情報リテラシーを磨くこと - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 共産党はともかく、野党第一党党首がいまだに本件を誤解しているというのは問題ですね。支持率が伸びないのも分かるような気がします。

首都圏型の感染拡大

 年明けから静岡県の「COVID-19」新規感染者数も急増していて、先週はついに100名/日を超えた。以前から政令指定都市静岡市浜松市)はクラスター発生もあったのだが、最近の特徴は県東部(含む熱海市)で増えているのだという。沼津市三島市富士市などで、10名/日くらいの新規感染者が出ている。地元メディアは、

 

・県東部で首都圏型の感染が拡大

・病床など医療資源に黄信号

 

 と伝えている。もともと政令指定都市ほど医療資源は豊富ではない、そこに首都圏からの人の移動による感染拡大が来て窮地に立っているということ。「首都圏型」とは何かというと「忘年会などの飲み会で感染した人が菌を家庭に持ち帰って広める」ということらしい。僕を含めて新富士・三島・熱海駅から新幹線で東京方面に通勤している人は少なくないし、とうとうそういう人たちが県東部での感染拡大を媒介する段階に入ってしまったようだ。

 

 分科会の尾身会長らが「年末年始は大人しく」と言っていたにもかかわらず、やっぱりクリスマスの音を聞くと弾けてしまったようで、大みそかあたりから首都圏で感染爆発が起きた。ただ専門家によると「忘年会などあったにしても急増しすぎ」とのこと。恐らくは、検査数が予想以上に増えたのではないかと思う。

 

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 なぜ人が検査に行くようになったかというと、理由は3つありそうだ。

 

・年末の仕事を終えて時間が出来たので、以前から不安だったのを検査した。

・帰省や旅行をするから、その前に検査して安心しようとした。

・羽田衆議院議員(享年53歳)の死去で、若い人でも死ぬと心配になった。

 

 熱海市では、新年になって毎日2~3名程度の新規感染者が出ている。隣県までの緊急事態宣言もでて、予定されていた花火大会も中止になったが、それでも来訪者はいる。当マンションは、119軒中2/3がリゾート所有。街中の観光客は減っていても、休日には首都圏から宿泊・滞在に来る人は少なくない。駐車場では、23区や横浜、川崎といったナンバープレートが目立つ。

 

 一時期話題になった「自粛警察」みたいなものが、現れなければいいのですがね。そういえば今月にはマンションの組合総会があります。定住者とリゾート族の間で、妙なコンフリクトが起きなければいいと思っていますよ。

2021年、世界のリスク

 イアン・ブレマー氏率いる米国のコンサルティング会社「ユーラシア・グループ」は、恒例となっている「今年の世界の十大リスク」を公開した。この記事にあるように、第46代米国大統領に就任するジョー・バイデン氏がNo.1のリスクだとある。(原文では46*と表記されている)

 

世界のリスク、1位はバイデン氏 ユーラシア・グループ(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

 

 バイデン次期大統領は、選挙で史上最高の8,000万票を獲得しながら、史上2位の7,400万票を獲得し敗北を認めないトランプ先生からの非難を浴びている。「不正があった」との非難を真に受けないまでも、かくも難しい国際情勢下で国内は分裂したうえに高齢であり、無事に二期目に立候補できるとは誰も思っていない。トランプ先生の二期目が無くて良かったね・・・では米国は済まないようだ。

 

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 実はこのレポート、ブレマー氏の友人の有識者から回してもらって目を通した。原文は電子メールながら非常な長文、2項目だけ読んだところでOutlookの翻訳機能を思い出し、日本語にしてもらって残りを読んだ。以下、

 

2.長びく「COVID-19」

3.気候:Gゼロ時代のネットゼロ

4.米中緊張の拡大

5.国際的なデータ規制強化

6.サイバー紛争の激化

7.冷たいトルコ

8.中東:石油収入の低迷

9.メルケルの後の欧州

10.ラテンアメリカの失望

 

 というリスクが挙げられている。特に5項について、ブレマー氏は「データ(覇権)は、米中間の技術冷戦の主戦場になる」と言っている。中国は経済活動で使っているクラウド等の機能を米国資本の物からは遠ざけるし、米国は交通システムのような重要インフラが発するデータを中国の影響下にある機器を通さないように工夫する。そこに個人情報に特にセンシティブな欧州勢が加わり、米国はG7諸国を中心に中国包囲網を敷こうとするが、中国も易々とそれを許さないという。

 

 もうひとつは6項のサイバー空間での暗闘、そこは悪意のある国家やハッカー集団がほぼ免責で活動できるところ。この傾向は今年も強まり、サイバー紛争は前例のない技術的・地政学的リスクを今年産み出すだろうと予測している。

 

 もとはと言えば4項の米中対立にしても、その要因の半分程度はサイバー空間で創られデータ覇権にからむものです。うーん、この分だと僕の専門領域はまだ重みを増しますね。もっと助けが必要ですよ~。