Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

チューリング・マシンと秘話

 「チューリング・マシン」という言葉は、40年余り前大学の講義で聞いた。最近聞くことがないが、Wikipediaによると、「計算類型の一つで、計算機を数学的に講義するための、単純化・理想化された仮想機械である」とのこと。僕が学生の頃コンピュータ・サイエンスは専門に講義できる教官は少なく、電気工学・電子工学と数学の教官が主体だった。

 
 数学系の先生が時々口にしていたのがこの言葉だったが、僕はあまり内容を覚えていない。でも、これに関する論文の著者アラン・チューリングの名前は憶えていた。前回の長いフライトでは面白そうな映画は多くなく、ふと「イミテーションゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(2014年)を見た。エニグマとはナチスドイツの暗号システム、いくつもこれに関する小説や映画がある。多くは暗号機や暗号のキーを奪取しようとする連合国側と守ろうとするドイツ側のスパイ戦を描いたものだ。
 
 この作品はエニグマという機械には人間(人海戦術)では対抗出来ないとして、「機械対機械」の戦いを挑み勝利した数学者チューリングに焦点をあてたところが珍しい。チューリングを演じるのはイギリスの俳優ベネディクト・カンバーバッチ。この人「Star Trek into the Darkness」での悪役がものすごく、カーク船長/スポック副長を喰ってしまったという印象が大きい。
 

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 現在のシャーロック・ホームズものは、この人を置いて他にはないと思う。怜悧な常人を超越した天才役がぴったりで、今回のチューリング教授はまさにはまり役。面白く2時間見させてもらった。チューリング教授は連合国側の勝利に貢献した人物だったが、LGBTに悩み41歳で自殺するという悲劇の主人公でもあった。英国は21世紀になってから教授の功績を公表し彼の名誉を回復したという。今度のポンド札改訂で、彼は50ポンド札に肖像画が載るらしい。
 
 いい映画だったが最後の「チューリング・マシンのことを今はコンピュータと呼ぶ」というナレーションはいただけない。チューリング・マシンはあくまで仮想機械、これを実現するには沢山の技術者/研究者の努力があったのですから、チューリング教授が全部作ったというような誤解は避けるべきでしょう。

ボスポラス海峡を見下ろすパーティ

 国際会議の初日の日程が終わると、続いてはルーフトップでのパーティが待っている。一旦部屋に戻って、書類など置いて、ネクタイも外して指定されたフロアに行った。午後7時だが、まだ日が高い。天候は快晴、気温は30度くらいだろうか。涼風も吹いてくるので日差しの強さを除けば快適である。スマホの天気予報を見ていると、東京は35度越えだから、「避暑」に来たような気分である。目的のセッションが終ったから、気が大きくなっているのだ。

 

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 広いテラスなのだが、なにしろ参加者350人だからたちまちのうちにすし詰め状態になった。特に誰かの挨拶や乾杯の音頭があるわけでもなく、まず現地のビールを貰って呑み始めた。おつまみの方は、何か所かに設けられたブッフェでシェフたちが作ってくれるものを適当にもってくる。

 

 何人か知り合いがいたので話し込んでいると、今度はワイングラスをウェイターが運んできた。ここは白ワインでしょうね。方々でワイガヤの声が聞こえてくる。なるほどこれがこの会議のもう一つの目的だと気づいた。日本から来た100名くらいと現地の250名という比率だが、まず現地と言ってもものすごく広い。イラク駐在の人と、モロッコ駐在の人が合えるとしたらこういう機会しかないだろう。日本からの人も含めて、本音で状況を話し合い意見交換するには最適の場だ。

 

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 さらに、中にはお酒が厳禁という国に駐在している人もいる。サウジアラビアがその代表で、ある人はサウジに勤めているのだが自宅はバーレーンにあるという。「Cross Border Work Style」である。自宅では公にビールが呑めるのだ。お酒だけではなく、商習慣含めビジネス上の苦労はいかばかりかと思う。それでも日本のエネルギー安全保障などは、彼らの双肩にかかっているのだ。そういうストレスの溜まった人たちの「ガス抜き」の場と言う意味もある。

 

 のどが渇くので白ワインがすすむ。グラスに残り少なくなると、どこからともなくウェイターが廻ってきてワインを足してくれる。そのうちにどれだけ呑んだか分からなくなってきた。じょじょに日が傾き、ボスポラス海峡の海の色が暗くなってきた。昨夜遅く到着したばかり、時差ボケのレベルまで行っていない体調である。このままだと倒れてしまいそうだと思い、部屋に引き揚げることにしました。ごちそうさまでした。

ボリュームランチ(から揚げ定食)

 1カ月ほど前に「吉野家」の「牛皿麦とろ定食」のキャンペーンがあって、その期間に2度食べることができた。その2度目の時、今度は「から揚げ」のキャンペーンということで、100円割引券をもらった。Webでメニューを見てみると、なかなか多いバリエーション。中には「から揚げ単品」130円というものまである。

 

 定食に丼に、牛皿と組み合わせたり、ねぎ塩にしたりタルタルにしたり・・・よくもこれだけメニューが作れるものだと思ったし、現場がよくそれをこなせるなと感心した。それでは試してみようと、最近見つけた八重洲の地下街のお店に行ってみると、「ここでは扱っていません」との返事。確かに一部店舗限定とある。設備や訓練含めて、全店への展開は無理なのだろう。

 

 しばらく食べる機会がなかったのだが、この日は神田駅のそばで14時からの会議。神田駅東側の店舗では、「から揚げ」メニューがある。今日はここで遅めのランチとしてみよう。入ってみると1階のカウンターはほぼ満席、「お二階にどうぞ」と言われて階段を上がると、カウンターもあるが4人掛けテーブル席もある。テーブルには「吉呑み」と書いてある。ちょい呑みができるくらいの広さがあれば、「から揚げ」も出せるということだろう。

 

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 4人テーブルで牛丼を食べているサラリーマン風の3人連れから離れた2人用テーブルに座り、一番シンプルな「から揚げ定食」(640円)を頼んだ。タルタル(400KcalほどUP)は論外としても、おろしやねぎ塩はどうしようかと迷ったが、Simple is the BESTというわけ。コールスローには胡麻ドレッシングが付いてきた。

 

 ご飯と(味の薄い)みそ汁はいつもと同じ。売り物の「から揚げ」は4コしかないが思ったよりずっと重い。大きすぎて芯まで火が通っていないかもしれないが、半生が美味しいという人もいるから好みの問題。揚げたてだし中身はジューシー、なかなか好印象だった。おそらくこれも「牛丼一本足打法」からの脱却を目指すトライアルなのだろう。まあ確かに候補ではあるけれど、牛丼並みに洗練するにはだいぶ時間がかかりそうですね。

日本人ばかりの国際会議

  初めてトルコの地を踏み、ボスポラス海峡を眺めることになったのは、ここで開かれる国際会議に参加するため。Conradの大ホールに入りきらない350人もの参加者のほぼすべてが日本人。配られる資料も表示されるスライドも、講演者の語りも日本語だ。

 

 会議の名称は「中東現地協力会議」といい、中東エリアに駐在する日本企業の社員たちが年に一度集まる会合。日本からも霞ヶ関や産業界からかなりの人数がやってくる。参加者リストを見て、これじゃフライトが取れなかったわけだと納得した。総勢は350人にものぼる。日本からイスタンブールへの直行便はトルコ航空の1便しかない。

 

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 なぜ僕がこれに参加することになったかと言うと、この44回もの歴史を持つ会議のテーマに「デジタル経済」が初めて加えられたからである。この会議での「中東」の定義は、西はモロッコ、東はイラン、南はスーダンが入るのだが、どうしても経済的にはエネルギー系の色が濃い。紹介されるテーマとしてはエネルギー資源、原油価格などの経済、これらに影響を与える地政学的要素・・・ということになる。今回はそこにG20で主要議題になった「Cross Border Data Flows」を含むデータ活用の話が加わったのだ。

 

 主催は経産省の外郭団体である「中東協力センター」、後援も経産省で参加者にも経産省OBが多い。主催者挨拶に始まり、現地の大使も何人かやってきて駐在国の紹介をした。初日の午前中に「デジタル経済」のセッションがあって、データ活用の事例や課題について議論が行われた。サウジアラビア駐在の人が「サウジにはLocalization規制があって、データを国外に持ち出せない」と言っていた。

 

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 G20で、南アフリカ・インド・インドネシアの3国がいわゆる「大阪トラック」に反対したように途上国には、「先進国/大国にデータを搾取されるのでは」との危惧が大きい。これに対してパネリストの大学教授が、「途上国でもデータ活用ができ、その意味を知る人物がいれば、流通に前向きになる。そういうキャパシティビルディングの支援を日本政府に望みたい」といっていたのが印象的だった。

 

 目的の2時間のセッションが初日の「昼飯前」に終わった。ミッションの大半は終わったので、あとは「世界三大料理の一つ、トルコ料理」をいただきましょうかね。お腹空いた~。

口コミだけは防げないから

 香港のデモが収まらない。容疑者の身柄を中国本土に引き渡すことを可能とする法律の施行にあたり、市民の人権が侵されるとして立ち上がったデモだが、空港ターミナルを占拠したり、ゼネストを予感させるまでに膨れ上がった。香港政府当局は当面この規定を適用しないことを表明しているが、民衆の怒りは収まっていない。

 

 デモ集団は行政府長官の辞任を求め長官自身も辞めたいようだが、バックについている中国政府(習大人)がそれを許さない。エスカレートするデモに、治安当局の表の取り締まりとは別に秘密警察や暴力団まで繰り出して中心人物や組織を締め上げているらしいが、これまでのところデモ終息の見通しは立っていない。

 

 ある人によると一般の香港市民は、2つの階層に分かれるという。ひとつはデモに積極的に参加する人たちで、もうひとつは参加したいけど踏み切れていない人たちだそうだ。中国政府はこの事態を憂慮していて、ウラで米国外交官が扇動しているなどと非難をする一方、香港の火が本土に広がらないよう必死になっているともいう。チベットや新疆ウィグル自治区などに飛び火したら現体制が危ない。

 

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 そうなる前に「第二の天安門」として実力で鎮圧することも、上記のようになれば躊躇するまい。そんな中、面白い記事があった。香港のデモに参加したキャセイパシフィック航空の搭乗員は、本土便に乗せるなというのだ。

 

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/08/post-12744.php

 

 キャセイパシフィック航空の最大株主は「スワイヤーグループ」という民間企業連合。つまりれっきとした民営企業である。それに中国政府がどれだけ影響力を持てるかは不明だが、そこまで焦っているのかとも解釈できよう。

 

 香港デモの状況は、もちろん中国本土のメディアでは扱われない。インターネット・SNSで入ってくる情報に関しては、100万人の人民解放軍兵士がネット上を監視して削除している。それでも止められないのが個人の口コミ。実際に香港デモに参加したキャセイの搭乗員が、北京などで一夜を過ごしレストランでグチをこぼすようなことがあれば、じわりじわりと噂は広がる。

 

 今回の「指令」はそれを防ごうとしているようだが、キャセイの搭乗員を含む香港市民のほとんどが、デモに参加するかどうかは別にして中国政府に不信を持っている以上、「指令」が守られたとしても噂を防ぐことはできまい。香港デモは、習大人の悩みどころとしてトランプ先生の挙動より困ったものでしょうね。